Morzart Symphony Orchestra
モーツァルト・シンフォニー・オーケストラ

マエストロ・ペンの  
  ある日のモーツァルト (1)

            10月26日

 1783年10月26日ザルツブルクの聖ペテロ教会で、モーツアルトの未完の大作ハ短調ミサ曲が演奏されています。これは宮廷音楽家全員の共演で演奏され、二つあるソプラノ独唱の一つを妻のコンスタンツェが歌っています。その1年前に父の反対を押し切って結婚したコンスタンツェとの間には男の子(ライムント・レオポルト)が生まれていましたが、この年の8月19日に腸閉塞を患い死去しています。
 このミサ曲は完成されていません。この時の公演も他のミサ曲から数曲借用しての演奏でした。モーツアルトはこの作品を注文に寄るものではなく自発的に書いています。反対を押し切って結婚した妻コンスタンツェが、歌手としていかに技量があるのかを見せる目的があったとも言われていますが、何故未完成に終わったのか、実は分かっていません。晩年のレクイエムが彼の死を持って未完に終わったのとは違い、モーツアルトは以後完成させる意欲を失ったかのように見えます。彼の35年の生涯で未完に終わった作品は他にも幾つかあります。オペラの幾つかは断片的な楽譜しか残されていませんし、協奏曲にもそれが見受けられます。天才モーツアルトをしてもうまく行かない事はあるのですね。オペラの場合は、台本の完成度が大きく左右した事でしょう。つまり出来の悪い物語だと彼のインスピレーションは刺激されないのです。「つまんねえや」と思った途端にやる気をなくす、天才特有の気分屋体質もかんじられますね。でもこのミサ曲は、書かれた部分を見ても充実した完成度を見せており、何しろ故郷の家族(特に父親)や友人に、いかに自分の妻が素晴らしくて自分に相応しいかを納得させるビッグチャンスだったのですから、完成させて当たり前に思うのですが・・・。ヴォルフガング、どうしちゃったの?
 レクイエム同様この作品も、ランドン、バイヤーなど幾つかの完成版が作られています。しかしこうなる筈(だったろう)という資料が若干残されたレクイエムと違い、これらの完成版はちょっと疑問を覚えますねえ。モーツアルトも変な所で罪作りです。

モーツァルト・シンフォニー・オーケストラ 2003年創立     ホームページ 2008年開設     無断転載禁止